新型水虫、トリコフィトン・トンズラスとは?
外国からやってきた新型水虫
トンズラスと呼ばれる新型水虫。原因菌はトリコフィトン・トンズランス(Trichophyton tonsurans)という白癬菌です。
この白癬菌はもともとは日本国内にはいなかったものです。1960年ころにキューバからアメリカに持ち込まれたと考えられています。
1990年代の初めごろにはアメリカ、ドイツ、韓国などで広がり始めました。当時の日本ではまれに発見される程度でした。しかし2001年には学生の間での集団感染が報告され、国内でも広まっていることがわかりました。
2001年のころは東北・北陸・近畿で確認されるのみでしたが、2010年に神奈川での流行が確認されるなど、現在では感染報告は全国的に広まっています。
1990年代の欧米ではレスリングなどの格闘技競技者の間で流行しているのが確認され、この流れは現在も続いています。
日本でも、柔道やレスリングなど、体を接触させるスポーツの競技者の間で感染が広がっています。2006年の全国中学柔道大会の際に男女496人を調べたところ45人で感染が確認されました。これは全体の9.1%、約1割もの選手が感染していたことになります。
この流行を受け、全日本柔道連盟は予防の啓発に力を入れています。
新型水虫:トリコフィトン・トンズラスの症状
新型の水虫と言われますが、足に症状が出ることは少なく、頭、顔、首、上半身などで発症することが多いです。そのため症状は
- 田虫(タムシ)
- 白雲(シラクモ)
であることが多いです。
田虫は体部白癬のことで、体部の皮膚で白癬菌が増殖する症状、白雲は頭部白癬で、頭で白癬菌が増殖する症状です。
症状についての詳しい解説は、水虫以外にもある白癬菌の病気をご覧ください。
トリコフィトン・トンズラスは症状がひどくなる人もいれば、ほぼ症状が出ない人もいます。
ひどい場合は皮膚から膿が出たり、髪の毛の脱毛(ケルスス禿蒼)にまでなります。なぜこれほど症状に差が出るのかは定かではありませんが、若い人のほうが症状がひどくなりやすい傾向にあるようです。
トリコフィトン・トンズラスの特徴、脅威の感染力。
トリコフィトン・トンズラスは感染力が強いのが特徴です。普通の水虫なら競技者同士が体を接触させるくらいでは流行しません。(接触程度で流行するようなら、競技者は以前から水虫に苦しんでいることになってしまいますよね。)
接触程度で感染してしまうこの驚異的な感染力は、トリコフィトン・トンズラスは皮膚への進入速度が速いためです。
また、進入速度が速いということは治りにくいということでもあります。
トリコフィトン・トンズラスの治療薬・治療法
新型水虫は感染力が強く治りにくいのが特徴ですが、治療方法は普通の水虫と同じです。薬も市販の水虫薬で治療できます。
市販薬を1ヶ月ほど使用しても症状が治まらない場合は病院で薬を処方してもらいましょう。病院なら飲み薬も処方してもらえます。塗り薬と飲み薬を併用すれば間違いなく治ります。
要注意!症状が消えやすく見逃しやすい
トリコフィトン・トンズラスは髪の毛が失われるほど症状がひどくなる人もいますが、半年ほどで症状が消えてしまう人もいます。この症状が消えるというのが要注意です。
症状がおさまっても治ったわけではありません。菌は角質層に潜んでおり、感染力があります。
自覚症状の無い人から周囲に広がり、感染が拡大していく恐れがありますので、症状が出たら見逃さず、すぐに治療を開始しましょう。
また、症状が治まっても治療をやめず、しばらく薬を使い続けましょう。(治療の継続期間)
トリコフィトン・トンズラスの予防法と対策
予防法は水虫と同じで、清潔に保ち、乾燥させることです。
柔道やレスリングなど、体を接触させるスポーツをしている場合
- 練習後にはシャワーを浴びる。
- シャワーが無い場合は頭部は水道で洗い、体はぬれタオルで拭く。
- タオル、衣類の貸し借りはしない。
- 練習場、自分の部屋をこまめに掃除する。
ように気をつけましょう。菌が触れても、角質層に侵入する前に洗い落とせば感染しません。
毎日、清潔を心がけましょう。