水虫薬の有効成分比較ランキング
2002年以降のスイッチOTC成分がおすすめ
水虫薬の効き目を示す数値にMICというものがあります。これは「水虫の原因菌である白癬菌の増殖をとめるのにどれくらいの薬剤が必要か」というものを示したものです。MICが0に近いほど少ない量で効くという意味になるので、数値が小さいほど強力な成分ということになります。
また、下記に出てくるスイッチOTCとは、それまで医療機関でしか処方できなかった薬剤が、市販薬でも使用できるように許可されることです。この年が新しいほうが基本的には効果が高いといえます。
*解説中に出てくる白癬菌の種類について、詳しくは水虫の原因菌、白癬菌の種類を、
*イミダゾール系などの系について、詳しくはイミダゾール・アミンなどの系とは?をご覧ください。
ルリコナゾール:特別(医療機関用)
- 紅色白癬菌へのMIC:0.00012~0.004μg/ml
- 毛瘡白癬菌へのMIC:0.00024~0.002μg/ml
- 鼠径表皮菌へのMIC:0.001μg/ml
- カンジダ(Candida albicans)へのMIC:0.031~0.25μg/ml
- 医療用。市販薬では使用できません。
そのほかの成分とは桁違い。MICの値は、現在市販薬で最強の成分であるラノコナゾールの半分ほどという強力さ。治療期間も短縮でき、ビホナゾールなど第二世代真菌薬の半分程度の使用期間で治療できるという報告もされています。医療用の薬にしか使用できないので市販薬では使われていません。
ただ、ここまで強力な成分でなくとも水虫は治療できます。
ラノコナゾール:1位
- 紅色白癬菌へのMIC:0.00024~0.016μg/ml
- 毛瘡白癬菌へのMIC:0.0005~0.004μg/ml
- 鼠径表皮菌へのMIC:0.001μg/ml
- カンジダ(Candida albicans)へのMIC:0.063~0.25μg/ml
- 2006年スイッチOTC
ラノコナゾールは市販薬ではMICがもっとも小さい成分です。当初は第一類医薬品でしたが、2011年1月7日の変更により第二類医薬品に変更され購入しやすくなりました。第一類当初はラノコナゾール配合の市販薬はウィンダムのみでしたが改定後は使用する市販薬が増えました。
ウィンダム、フットガンコーワ、ピロエースZなどに使用されています。
塩酸アモロルフィン:2位
- 紅色白癬菌へのMIC:0.0012~0.02μg/ml
- 毛瘡白癬菌へのMIC:0.0012~0.08μg/ml
- 鼠径表皮菌へのMIC:0.01~10μg/ml
- カンジダ(Candida albicans)へのMIC:0.01~10μg/ml
- 2002年スイッチOTC
モルホリン系の抗真菌薬で、ラノコナゾール、テルビナフィン、ブテナフィンとは働くメカニズムが異なります。(働くメカニズムについてはイミダゾール・アミンなどの系とは?をご覧ください。)
ダマリンエースで使用されており、カンジダにも良く効きます。
塩酸テルビナフィン:3位
- 紅色白癬菌へのMIC:0.002~0.25μg/ml
- 毛瘡白癬菌へのMIC:0.001~0.06μg/ml
- 鼠径表皮菌へのMIC:0.004μg/ml
- カンジダ(Candida albicans)へのMIC:2~64(未満)μg/ml
- 2002年スイッチOTC
ダマリングランデ、ラミシールなど多くの市販薬で使用されています。
塩酸ブテナフィン:3位 同率
- 紅色白癬菌へのMIC:0.0015~0.025μg/ml
- 毛瘡白癬菌へのMIC:0.006~0.025μg/ml
- 2002年スイッチOTC
塩酸テルビナフィンと同程度の効き目を持ちます。特に白癬菌に対して有効でそれだけなら塩酸テルビナフィンより良い値なのですが、カンジダにはほぼ効果がありません。水虫は白癬菌なのでカンジダまで気にしなくても良いですが。
ブテナロックなどで使用されています。
塩酸ネチコナゾール:5位
- 紅色白癬菌へのMIC:0.05~0.1μg/ml
- 毛瘡白癬菌へのMIC:0.01~0.2μg/ml
- 鼠径表皮菌へのMIC:0.012μg/ml
- カンジダ(Candida albicans)へのMIC:6.25~25μg/ml
- 2002年スイッチOTC
ネチコナゾールは第三世代の成分で1日1回の使用で効果が得られますが、2000年以降のスイッチOTCとしてはMICが高い(効果が低い)です。
皮膚への刺激が低く、肌に優しいと開発時のレポートにありますが、どの成分も皮膚への刺激が低いから薬として使用できているもので、ネチコナゾールが特に低刺激であるという情報はありません。
特別な理由が無い限り、選ぶ必要は無いでしょう。
ラノコナゾール、テルビナフィン、ブテナフィン、アモロルフィンの効果は同じ
ラノコナゾール、テルビナフィン、ブテナフィン、アモロルフィンのどれかが使用されている水虫薬であれば効果に差はありません。
ラノコナゾールのMICが一番小さいのですが、塩酸ブテナフィンのMICでも十分過ぎるほど小さな値で、「1000倍に薄めても効果がある」という値であるためです。
上記の成分は第三世代真菌薬といわれる効果の高い成分で以前は医療用でした。それがスイッチOTCで、塩酸テルビナフィン・塩酸ブテナフィン・塩酸アモロルフィンは2002年から、ラノコナゾールは2006年から市販薬でも使用可能となったもので、効果はお墨付きです。
第二世代の有効成分
上記の第三世代真菌薬は必ず効果がでます。(正しい塗り方と、一定期間の継続使用は必要です)。また1日1回の使用でよいという手軽さも魅力です。
上記の成分以外、いわゆる第二世代の成分を使用した水虫薬は使用しないほうが良いでしょう。浸透力を売りにしているものもありますが、白癬菌の抑制力が弱いのでは意味がありません。私は使い続けても治らなかったのですから。
以下に第二世代を含む水虫薬の成分(抗真菌薬)も紹介しますので参考にしてください。第三世代とはMICの桁が違うことがわかるはずです。
トルシクラート
- 紅色白癬菌へのMIC:0.1μg/ml
- 毛瘡白癬菌へのMIC:0.1μg/ml
- 鼠径表皮菌へのMIC:0.0125μg/ml
- 1991年スイッチOTC
チオコナゾール
- 1991年スイッチOTC
硝酸エコナゾール
- 紅色白癬菌へのMIC:0.01~0.31μg/ml
- 毛瘡白癬菌へのMIC:0.31~1.25μg/ml
- カンジダ(Candida albicans)へのMIC:5~10μg/ml
- 1988年スイッチOTC
硝酸ミコナゾール
- 紅色白癬菌へのMIC:0.32μg/ml
- 毛瘡白癬菌へのMIC:0.16~0.63μg/ml
- カンジダ(Candida albicans)へのMIC:0.08~5μg/ml
- 1987年スイッチOTC
シクロピロクスオラミン
- 1987年スイッチOTC
エキサラミド
- 1984年スイッチOTC
ビホナゾール
- 紅色白癬菌へのMIC:0.08μg/ml
- 毛瘡白癬菌へのMIC:0.016~1μg/ml
- 鼠径表皮菌へのMIC:0.13μg/ml
- カンジダ(Candida albicans)へのMIC:0.5~4μg/ml
- 第三世代登場前は主力だった抗真菌薬。
- 1983年スイッチOTC
硝酸スルコナゾール
- 紅色白癬菌へのMIC:0.2~6.25μg/ml
- 毛瘡白癬菌へのMIC:0.39~1.56μg/ml
- 鼠径表皮菌へのMIC:0.04~0.78μg/ml
- カンジダ(Candida albicans)へのMIC:0.31~12.5μg/ml
- 1983年スイッチOTC
硝酸オキシコナゾール
- 1983年スイッチOTC
- カンジダの薬として使用されています
クロトリマゾール
- 紅色白癬菌へのMIC:1.56μg/ml
- 毛瘡白癬菌へのMIC:0.78μg/ml
- カンジダ(Candida albicans)へのMIC:3.12μg/ml
- イミダゾール系抗真菌薬の元祖。